とくし丸は、インフラ。地域に寄り添い続けるために

とくし丸導入にあたり、期待していた効果はどのようなものですか?

土屋:地域にどれだけ貢献できるか、ということです。
スーパーマーケットというのは地域に根付いている商売だと感じています。「長年、当社の店舗をご利用いただいたお客さまに寄り添い続けたい」という想いで運営しており、とくし丸事業は非常に有益な事業のひとつだと思っています。

とくし丸導入後、実際のお客様の声というのは本部にどのように届いていますか?

土屋:「生鮮品などの、どうしても買い物に出かけないと買えなかったものが、とくし丸のおかげで買えるようになって、生活が非常に豊かになった」という声をいただいております。

とくし丸の魅力はなんだと思いますか?

土屋:一番は、ご自宅の近くまで商品をお届けできることです。
お客さまにも、「スーパーマーケットがそのまま玄関の前にやってくる」というところを、とくし丸の魅力として感じていただいていると思います。


開業前からの日々のものまで、いなげやからはどんなサポートがありますか?

小林:販売パートナーの中には、小売りが初めてという方もいらっしゃるので、まずは「お買い物をしてみてください」と私はお話ししています。
実際にお買い物をしていただき、何がお店に並んでいるのか、何が美味しいのかなどを自分で確かめて、それをしっかりおすすめできるようになっていただきたいと思っています。

また、様々な手続きは、我々がフォローしています。
そのほか、自治体や介護施設など、個人ではコミュニケーションが取りにくいところに対して、我々「いなげや」の名前を出すことで交渉がスムーズになることもあるので、そのような部分もサポートさせていただいています。
開業された後、お客さまの獲得に伸び悩んでいるという場合には、「どのように新規エリアへの展開を進めていったら良いのか」などのアドバイスもさせていただいています。

やはり、販売パートナーは日々ひとり、もしくはふたりでやられているため、いろいろなお悩みが出てくるものです。随時、相談事は受け付けていますし、愚痴も聞きます(笑)。

そのほかにも、お互いに「売上が上がって良かったね!」というような話も共有させていただきながら、日々サポートしています。

販売パートナーとのコミュニケーションで気を付けていることはありますか?


小林:そうですね。やはり距離感は大事にしています。
あまりに近すぎてはいけないし、遠すぎてもいけないというところは気を付けています。

ただ、台数が増えるにつれてコミュニケーションが希薄になってきていると感じるので、反省しなくてはいけないと思っています。
できるだけ気軽に話せる関係を意識しつつ、「ビジネスではあるけど仲間だ」ということを考えながら接しています。ます。


とくし丸事業における課題や改善点を教えてください。

小林:これだけニーズがあるにもかかわらず自治体によっては、「民間の事業である」という部分で、加担できないというような話をされてしまうこともあります。
公共性のある事業であることを、自治体もしくは国にもっと認知していただけたらと思っています。

とくし丸事業は、ただの金儲けの手段ではなく、「インフラのひとつ」というところを、もっとアピールしていきたいです。

会社員時代より ストレスフリーに働いてます

開業するにあたって不安なことはありましたか?

当時私は、開業資金はリースを選択しようと思っていたのですが、無職で収入0だったので審査が通るかとても不安でした。ただ、バックボーンに東武ストアさんがいたことによって審査も通り、無事開業することができました。

今はリースを選択したことによって支出が一定だということもあり、経費管理が楽になるという点と、
車両のメンテナンスもついてくるので安心・安全な車両管理ができるメリットがあると感じています。
車両について詳しくない私でも、これならやっていけています。

リースの月々の支払いは大きいですが、やっていけない完全に無理な数字ではなかったです。
確定申告もこれまでやったことがなく不安でしたが、ソフトを使ってやってみると簡単にでき、税理士など使うことなく今では自分で行っています。

また私は収入の面でもとても不安でした。個人事業主なので自分に何かあった時には収入がなくなってしまいます。体調を崩してしまうと営業が停止し、その分直接収入にも響いてきます。

また自分自身の問題だけではなく、買い物の手段の提供というお客様のライフラインを直接担っているので、
自分自身の体調には気を付けるようにしています。でも今はそれをプラスに捉え、体調の面も含め自分の仕事に責任感を持って働くようにしています。

とくし丸で働く上でどんなことに気を付けていますか?

私は一緒に働く仲間との関係性を大切にしています。
販売パートナーは個人事業主ではありますが、日々の営業の中で一緒に働く仲間、例えばスーパーの担当者や各部門の方、出入りする他の配送業者の方との関係性を大切にしています。

具体的には、しっかり相手と目を合わせて挨拶をしたり、ベースピッキング※や返品作業をやってもらって当たり前と思わずに、毎回必ずしっかりお礼を伝えるなどしています。
基本的には1人で業務を進めていく仕事ではありますが、日々サポートしていただき周りの力も借りて働いているので、円滑に業務を進めていく上ではとても大切なことだと感じています。

良い関係性を築くことによって「お客さんの名前だけじゃなくて誕生日とか結婚記念日も覚えてプリンとかちょっとしたプレゼントと一緒にお祝いしてあげると喜ぶよ!」などと売上を上げるためのコツを教えてもらったり、営業前に会話したりして1日の良いスタートが切れています。
朝たまにスーパーの担当者がいらっしゃると話が盛り上がって止まらなくなって遅れそうになる日もありますが…(笑)それくらい楽しいです。

簡単なことではありますが、一緒に働く仲間との関係性を大切にすることによっていつかはそれが自分に返ってくると考えています。

※ベースピッキング:基礎的な商品を選定すること

とくし丸で働いてみての感想を教えてください

私は30年以上勤めていた会社を辞め心機一転、新たなとくし丸を開業しました。
今は会社や上からの指示で動くのではなく、自分で考えや自分の意思で働くことができるため、個人事業主であることが逆に良かったです。

例えば、どうしたら売上を上げることができるのか自分で考え、実行することができるのです。
お客様が商品を見やすく選びやすく手に取りやすいように車両のレイアウトや棚を変更したり、接客の方法も自己流にしてみたりしています。

思ったように売れるとやっぱり嬉しいですし、思ったような結果にならなかったときにはまた考え、それを実行に移しています。
今は自分の意思で動き、実行していけることができる、そんな個人事業主として働くことが魅力的だと感じています。

砂村さん流の商売のコツを教えてください

私は週に2回お買い物をすることが楽しみなお客様の期待を裏切らないために、商品内容を飽きさせないようにしています。
お客様の喜ぶ顔を思い浮かべながら商品選びをし、新しい物・いつもと違う商品を持って行っていくことを心がけています。

中には80代になっても自宅にあるお肉や野菜を使って料理をしているお客様もいらっしゃって、「これを持って行くと喜ぶんじゃないか?」と思って積んだ商品を実際購入してもらうと、とても嬉しいです。

お客さんが「これが好き!」と言われ好みを知っていくことは重要ですが、何回かすると飽きてしまって買わなくなってしまいます。
お客さんを飽きさせないために商品を替えることが重要だと感じています。

都会を走るとくし丸

開業理由を教えてください

以前接客業の仕事をしていて、もう一度やりたいなと思ったからです。接客業というとコンビニや飲食店もあると思いますが、とくし丸の大きな違いは「1日に接客する人数が限られている」点にあります。

前職はイベントで一日に1,000人くらいの方の対応をしていましたが、そういうのではなくもっと小さい規模でその分一人ひとりのお客様とより近い距離感で接したいと思いました。今も昔も「人を喜ばせたい」という点では変わらないですが、今回はもう少しこじんまりとした規模で、その分一人一人のお客様とより近い距離感で接したいとくし丸の開業を決意しました。

開業前は、移動スーパーは過疎地とか地方のイメージだったので、「都内でも活躍してるんだ!」というのが第一印象でした。始める前の不安というよりは、やりたい接客業のイメージと合致している仕事だと感じて、早く始めたいというワクワク感の方が強かったです。

とくし丸で働くうえでの魅力は、何ですか?

私とお客様、お互い知った中で販売ができるというのは大きいポイントです。よく「見守り隊」といってこちらがおばあちゃんを見守っていると言われていますが、おばあちゃんから「アンタ調子悪いんじゃないの?」と元気がないとき逆に励まされたり気遣ったりしてもらえる、そんなお互い人間同士の付き合い方ができることが魅力です。
あとは自由に働ける点も魅力です。研修時にはスーパーの担当者から一通りのやり方を見せてもらいますが、あとは自由にやってくださいね、というような感じでした。とくし丸は個人事業主なので自分のやりやすいように変えていけることに魅力を感じます。
それこそ普通の会社ですと「これだけ売らなきゃダメ!」というようなノルマや縛りがありますが、とくし丸では自由に働くことができる代わりに、自分の裁量が試されます。自分の頑張りによって収入が大きく変わってくるので、甘えちゃうと全然ダメでサボった分だけ売上に反映されますし、その逆に頑張ったら頑張った分だけ自分の収入が上がる点も魅力だと感じてます。

今、東京都新宿区エリアで販売されていますが、都心にも需要はあるのでしょうか?地方と都心とではお客様にはどんなお困りごとの違いがありますか?


こんな大都会でどれくらい需要があるのか、自分も最初は半信半疑でした。でも今は、お困り度合いや環境の違いはあれど、このビジネスは都心エリアでも成り立つと実感しています。例えば、都心だと歩いて10分圏内にコンビニやスーパーがありますが、膝が悪くてそこまでいくことが大変だという方もいますし、重たい荷物を抱えて交通量の多い複数車線の道路を、1度の信号で渡り切れないという切実な声も聞きました。地方ではそもそもスーパーが減って困っているケースもあると聞きますが、都心部であっても取り残されているお困りの方がたくさんいらっしゃるので、とても需要があると感じています。中には、エレベーターのない団地の5階に住んでいて足腰が悪く降りてこられない方に、「注文受けて宅配」という形で販売しているお客様もいます。


働いているときのやりがいは何ですか?

私がおばあちゃんへ勧めた商品が「美味しかった」と言われたり、それをまた買ってくれたりすると嬉しいです。お客様の多くがおばあちゃん(女性)ということもあり、皆さん新しいものや流行りには今も変わらずアンテナを立ててらっしゃるので、私が商品のお勧めをすると興味を持ってくれます。自分が売ったものが「美味しかった」と直接言われることがやりがいに繋がります。この仕事に慣れるまでの1年間ぐらいはとても大変でしたが、それ以上に楽しさがあります。今となっては時間を忘れてしまうくらい楽しさややりがいがあり、仕事という考えでは働いていません。それほどこのとくし丸という仕事は楽しいと感じています。

とくし丸が変わるきっかけをくれました!

「お客さまを笑顔にしたい」という気持ちでファミレスで店長をしていた佐藤さん。気持ちとは裏腹に、管理業務や数字に終われて、心がすさんでいく毎日でした。疲れ果てて帰宅した深夜のテレビ番組で見たとくし丸が心に突き刺さりました。しかし、開業のための自己資金はゼロ。母親に頭を下げて資金繰りをし、開業して3年たった今佐藤さんが満面な笑みを浮かべるその理由とは?